一人の少女がそこらの木になっている果物を売り歩いていた。
売り物の果物をかじりながら。
急にかじりかけの果物を地面に捨てたかと思ったら、後ろをついて歩いていた犬が其れを食べ始めた。
この地には犬が多い。
彼らは飼い犬でもなければ野良犬でもない。
其処で人間と共存している。
此処では車はとても高級品だが、車に乗るような裕福な者は、路上に車を止めても駐車料金を請求され、素直に駐車料金を払う。
裕福な者が貧しい者に施すのは当然だから。
この土地で観光客は良く詐欺に合う。
両替所でバティックでタクシーで、そこら中で彼らは観光客を騙す。
しかし、土地の者達は裕福な者 ― 一泊の宿泊料金が彼らの一月の生活費よりも高いホテルに泊まるような観光客 ― から生活の糧を得ているだけである。
彼らの生活で特に金がかかるのはお供え物。
朝・夕は必ず其処此処の軒先に鮮やかな色の花や線香や果物の乗ったやしの葉が置かれる。
寺院に供えられる果物は其の日収穫された中で、一番良質なモノだ。
其処に住む一人の日本人女性と出会った。
彼女は言った。
「この土地の人たちは神様にお供え物をして、貧しい者に施して、みんなの為に生活している。」と。
神なんて信じないけれど彼らの心には確かに神が居て全てをただ見守っていた。