ある日の昼下がり、単車で町に出かけた。
いつもの道が工事中で珍しく渋滞。厚着をしていたので走っていないと汗が吹き出る。
別のルートをとることにした。
久しぶりに通った道の脇にタンクが放置されていた。
「昔はおいらもズドンズドンぶっ放したもんだった」。
タンクが呟いた気がした。
「今じゃ、お前さんの単車ほどの煙も出ねぇさ」。
その日の夕方、ひどい夕立になった。豪快な雨と雷の中、ずぶ濡れで帰って来た。
夕立は夜になってやっと治まったが、近くの村では鉄砲水のような勢いで小さな川が氾濫し、家々が浸水した。
「大砲も危ねぇが、あぶら燃やすのも危ねぇ。おいら、どっちも止めて、いまは結構幸せなんだぜ、これでも」。
タンクは、そんなことも言っていた。