「国鉄風景の30年―写真でくらべる昭和と今」 - 二村高史

国鉄風景の30年―写真でくらべる昭和と今国鉄風景の30年―写真でくらべる昭和と今
二村 高史

山海堂 2007-11
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自分は国鉄というものを知らない世代なだけでなく、いわゆる「鉄ちゃん」でもありません。なんとなく電車で移動するのは嫌いではない、という程度です。
この程度にもかかわらずこの本をおもしろいと感じたのは、過去(昭和40年代~60年代)と現在(出版は2007年)の「国鉄の風景」を写真で比較しながら詳細な説明をしているからです。

被写体にはバリエーションがあり、駅のホームからみた景色、待合室、今は縁遠くなったという貨物列車や貨物線の様子など、よくこんなに全国各地のありとあらゆるものを撮ったものだと感心します。鉄道マニアに限らず当時を知る人には懐かしさを感じる写真が多いのではないでしょうか。
そういう自分は当時をまったく知りませんが、駅舎の骨組みはペンキを塗り替えた程度でほとんど同じなのに、背景がぜんぜん違う写真からは不思議な印象を受けます。特に、背景は一緒なのに駅舎がきれいさっぱり姿を消した写真は切なささえ覚えます。

視覚的に比較できるのは、著者の地道な定点観測のおかげです。
そしてその観測の結果が、過去を知らない人間を感慨深い気持ちにさせるのは、やはり写真の効果ではないでしょうか。

少し、あとがきから引用します。

最初のうちは、人並みに鉄道雑誌の撮影地ガイドをチェックして、撮影名所やいわゆるお立ち台で写真を撮っていたのですが、いつしかホームで列車を待つ人びとの様子や、駅員さんたちが立ち働いている情景のほうに魅力を感じるようになりました。この本に収録した写真の大半も、そんな気持ちで撮ったスナップ写真ばかりです。でも、今見ると、気張って撮った写真よりも、そうした気軽な写真の方が懐かしく感じられるものですね。

写真はあくまで補助的な使われ方をしていてテキストによる「振り返り」が主ですが、電子化される前ののんびりとした国鉄の古き良きシステムを知りながら楽しむ1冊でした。

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