セバスチャン・サルガド アフリカ

  • 会期:2009年10月24日(土) - 12月13日(日)
  • 場所:東京都写真美術館

サルガド氏はドキュメンタリー写真において必ずと言っていいほど聞く名前です。が、あまりしっかりと見たことはありませんでした。
記憶にあるのは、約10年前に大学図書館で写真集を借り、生々しさのない報道写真だなーとやや不満を含む漠然とした感想を持った程度でした。
人によっては「感動的」「アーティスティック」「神々しい」といった感想を持つかもしれませんが、自分はそういった気分にはなれませんでした。

そしてつい先日、上記の写真展にちなんでNHK日曜美術館(11月29日)にて放映されていました。
サルガド氏本人が登場し、写真を始めたきっかけや作品の変遷について語っていく中、「生々しさのない報道写真」と感じた理由が分かりました。
ドライに事実を伝えるのみの(これが悪いというわけではありません)、歓喜や恐怖、血なまぐささや暴力がはっきりと表されているものとは異なる報道写真であったということです。テーブルの上にどかっと投げ出され、「さあこれが世界の現実だ」と言う写真も嫌いではないですが、そういう写真に感じる衝撃(とちょっとした違和感)がサルガド氏の写真にはありませんでした。

その理由は、番組の司会・姜尚中氏がサルガド氏に投げかけた的確な質問で徐々に明らかになってきます。
例えば、希望と絶望、豊かさと不毛さという矛盾するものが同居していますねというようなことを姜尚中氏が言いますが、つまりそういうことです。
ドライに事実を伝える報道写真は、絶望を写しますが希望を同時に内包してはいません。どちらかというと二者択一です。そういう矛盾を前提とした表現に自分は曖昧さのようなものを感じ、「生々しさのない写真」という感想を持ったのだと思います。
そして姜尚中氏の質問の意図は、そういう矛盾を抱えた二面性(多面性)のある表現が世界を説明しうるという考えに則っていたのではないかと推測されます。

日曜美術館は12月6日20:00から再放送されます。
ぜひ見てみてください。

極限に見た生命(いのち)の美しさ ‐写真家 セバスチャン・サルガド‐

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